ひとりごと(8)

12月に入った。
今年最後の1カ月の始まりを
ちょっといい気分で迎えることが出来た。
それは、昨日出会った作品のお陰かもしれない。

2年前から気になっていた作家の展示会にやっと出向いた。
広島そごうの美術画廊。

この質感だったんだ・・・
鮮やかで深い青、潔い無垢な気持ちになる。
厚めの大胆な皿、その線は繊細な曲線を描いている。
美しい茶碗、見入ってしまう鉢。
最近の私は、自分が蒐集したい気持ちが強く困ってしまう。
気持ちを抑えて数点を選んだ。
若い作家と控えめな素敵な奥様の二人が
会場を訪れる顧客に挨拶をされている。
お二人の日々の生活の中から、
生まれる思いが一つ一つの作品に溶けていくのだろう。

エスプレッソでひと息。

すぐ近くにある、ひろしま美術館にも足を延ばす。
常設のみの展示であったが、4つある展示室の3番目。
入るなり近寄った作品。ピカソが息子ポールを描いた作品。
この一枚を見るために来たような気がした。
ポールの来ていた衣服のブルーが印象的だ。
息子にも一緒に描いた子羊にも
ピカソの愛情が感じられた。

さあ、帰ろう。
この気持ちのままでギャラリーに戻ろう。
まだ、一日は終わっていないから。
そんな思いで午後3時15分、
ギャラリーのいつもの定位置についた私だった。