英一蝶筆「六歌仙図」紙本 箱有

画家

英 一蝶(はなぶさ いっちょう)

略歴

承応元年(1652年)― 享保9年(1724年)
江戸時代中期の絵師。
大阪生まれ。本姓は藤原、多賀氏。字は君受。俗称、助之進。
江戸に出て多賀朝湖と名乗り、狩野安信に画を学んだ。
芭蕉、其角等と交流した通人であるが、幕府の忌憚に触れ、三宅島へ流罪となり、江戸へ戻った後、画家名を英一蝶と改める。
俳諧に通じ、市井の人々や風俗を描き、浮世絵とは一線を画した画風に古典を題材とした作品など、一蝶独自の世界を作りあげた。

サイズ

総丈 縦118.5cm 横105.6cm
画寸 縦29.4cm 横102cm

状態

ヤケ 本紙に少し虫食いがあります。

六歌仙といえば古今和歌集の在原業平、小野小町、大友黒主、喜撰法師、僧正遍昭、文屋康秀の代表的な六人の歌人を思い浮かぶことでしょう。
こちらの作品にはご婦人が見当たらず、殿方ばかりの六人なので、新古今和歌集の時代に活躍した歌人たちによる新六歌仙になります。
左端の黒染の衣を身につけた西行、二人目は硯に筆先をひたし、まさに歌を書かんとする雅な面立ちの藤原定家、三人目は長寿を全うした人で、よく老人姿で描写される藤原俊成、そのお隣は僧侶姿の慈円でしょう。右側に鎮座する二人は藤原良経と藤原家隆かと思われますが、一蝶の作品に「六歌仙図屏風」(板橋美術館蔵)があり、そちらには良経と家隆の代わりに源俊頼、源経信が描かれており、一蝶セレクトのオリジナル新六歌仙とされています。
この掛軸には「朝湖」の落款がありますので、一蝶が前名の「多賀朝湖」と名乗っていた頃の作品であり、従来の新六歌仙なのか、それとも一蝶オリジナルの新六歌仙なのか、その謎解きや当時の制作作業に思いを馳せるのもまた楽しみの一つとも言えます。
本紙の上下に配した一文字も細い面相筆で描きこまれた描き表装仕立てとなっており、一蝶の遊び心が窺えます。