画家
谷 文晁(たに ぶんちょう)
略歴
1763年―1840年
江戸時代後期の絵師。
谷文晁といえば江戸時代後半期を代表する絵師。
いわゆる南画家といわれるが、南画にとどまらず自ら元明清の書画を研究して
当時の狩野、土佐、南画及び洋画の各手法を折衷し、のち、老熟して画体が変化して新画風を創造した。
明画的な緻密な着色画から筆法鋭い水墨画に至るまで
山水画、花鳥画、人物画、仏画等、各種の様式の作品が遺っている。
画塾・写山楼には多くの弟子が入門し、門前市をなすほどであったという。
サイズ
総丈 縦190cm 横50cm
画寸 縦96cm 横34.5cm
状態
本紙に少しシミがありますが美品です。
左/画部分
右/画部分
左/画部分
右/画部分
左/落款印章
右/落款印章
左/部分
右/部分
軸先
箱
湿潤な大気の中、丸みを帯びた壮大な山々が描かれた双幅です。
向かって右の軸には「文政八年五月端午」、左の幅には「乙酉夏月于畫学斎中」と年記があり、文政8年5月、文晁63歳に自らのアトリエ畫学斎で描いたことがわかります。
たっぷりと水分を含んだ墨で、雄大な山々と青々と茂った新緑の様を描いています。右軸の下方にはこれから舟に乗ろうとしているのでしょうか、荷物を背負った旅人の姿があり、その周りの河や木々を渡る初夏の爽やかな風を感じさせます。
左の軸は、手前から山々の奥へとたなびく雲で風景が霞み、夏の生温かい湿った空気が感じられます。画面下方には橋を渡る人物が風に逆らって歩いているのか難儀をしながら傘を差しているようです。
昭和54年(1979)栃木県立美術館で行われた谷文晁展は文晁の代表的な展覧会です。そこに掲載されている同時期の山水図の解説には「文政期半ばの文晁山水画の一つの特徴として、画面一杯に水蒸気の溢れた煙るような山水が多く見られるが、本図はその典型であり、
また文晁の代表的名品でもある。高遠的に主山を画面の奥に聳え立たせ、その前方に広大な空間を設定する構成はあまりに雄大である。川面にかけられた橋や、これを渡り行く人物の描写も絶妙である。」とあり、この山水図にも全く同様のことが言えます。