伊藤若冲筆「鯉図」紙本 箱有

画家

伊藤 若冲(いとう じゃくちゅう)

略歴

1716年―1800年
京都生まれ。名は汝鈞(じょきん)、字は景和(けいわ)。初めは春教(しゅんきょう)と号したという記事があるが、その使用例は見出されていない。
斗米庵(とべいあん)、米斗翁(べいとおう)、心遠館(しんえんかん)、錦街居士とも号す。
狩野派を学び、元明の古画と光琳派を研究し、動植物画に写生的な装飾画体を創案した。

サイズ

総丈 縦185.5cm 横40.8cm
画寸 縦108cm 横29.5cm

状態

本紙に経年による折れとシミが少しあります。

解説

若冲といえば、極彩色で描かれた代表作「動植綵絵」が有名ですが、鶏や鶴、野菜を墨色のみで描いた作品もまた魅力的です。
墨の濃淡による奥行き感や、動植物の硬さ軟らかさの質感の描き分けからは、画家の力量を推し量ることが出来ます。
こちらの作品は縦長の画面からはみ出すほどの躍動感あふれる大きな鯉。
くっきりとした濃墨の鯉の頭部から、徐々に淡墨で細やかに描きこまれた鱗模様へと変化していきますが、墨の滲みによる若冲お得意の「筋目描き」の技法がここで使われています。
筆に水をたっぷり染み込ませ、勢いよく描かれた背びれや尾びれも特徴があります。
鯉の回りに散らされた墨痕鮮やかな小さな半円形のものはデフォルメされた藻の一種でしょうか。藻と対比で並んでいるかのように押された印にも若冲の遊び心が表されています。